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Vale


険しい山道を登ってくるのは、朝の洗濯を済ませた家族です。

谷(Vale ”ヴァレ”)にある水源まで、毎朝往復しているそうです。

標高差は200メートル。片道1キロはある、険しい道ですが、

これはアンゴラではよくある村人の日常的な風景です。

ぼくも、山くだりに挑戦してみました。

運動靴を履いて、長ズボンを着て、雑草にからまれないように

防備しました。気温は30度を超えています。

急な下り道を勢いよく降り始めました。しかし、途中で膝が

がくがくして、休み休みに行かざるを得ません。

そこに、たらい一杯に洗濯物を積めて、歯を食いしばって登る

少女とすれ違いました。彼女は裸足でした。

カメラのレンズを向けても、立ち止まりません。

黙々と、自分で決めたリズムを守るように登っていきました。

その後から、

幼児を歩かせながら、背中に乳児を背負って登る若い女性、

重い洗濯板を頭に乗せて、わき目も振らずに登る子供、

その列は途切れません。

彼女たちは、自信に満ちた表情をしています。

疲れた顔をしている女性はいません。

下ること30分。

ようやく谷間の洗濯場に着きました。

透明で綺麗な湧き水があるのだろう、と期待していましたが、

ぼくの目にはひどく濁って見えました。

しかし、村人には、生きていくための恵みの水。

彼らには、違った色に見えるのかもしれません。

頭上を見え上げると、急な崖と真っ青な空が広がっていました。

斜面の道は、村人には有難いことと感じているのかもしれません。


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