Mulato
16世紀から20世紀まで続いた長いポルトガル統治の時代、
アンゴラの人々は肌の色によって、三つに分類されていました。
白人(WHITE)、混血(MULATO)、黒人(AFRICAN/BLACK)。
この違いは、社会的な地位まで左右するものでした。
今のアンゴラには、まだ多くのポルトガル系白人がいますが、
当時と違って、社会的な階級とは必ずしも一致していません。
ただ、混血と黒人には、依然と差がある、と言われています。
混血(MULATO、ムラト)は、多くが父がポルトガル人、
母親がアンゴラの黒人の場合です。
混血は、今日も黒人より社会的に優位な地位にいます。
そして、やはり、いつの世でも混血は容姿がエキゾチックです。
このため、黒人は白人のポルトガル人や、いわゆる黒人でない
外国人と結婚することに憧れる人が多いです。
白人との国際結婚は、いわゆる肌の所属からの決別を意味します。
生まれてくる子供は、いわゆる混血のMULATOとなります。
この子は、将来はポルトガルの国籍が取得できます。
教育も、医療も、ポルトガルで受けられます。
さらに、親戚までが、少なからず恩恵を受けることが可能となります。
先日、アンゴラに住む親しい友人の家に招かれました。
彼は日本に留学経験のある、アンゴラの黒人。
奥さんは、ロンドンに在住20年、ロンドンの大学を卒業した、
エリートです。彼女の父親は白人のポルトガル人、
母親が黒人のアンゴラ人。
奥さんは、つまり混血(MULATO)です。
奥さんの肌の色は、日焼けした日本人よりも白く、
その色は、写真で果物を持つ手でわかります。
台所の奥に立っている若い黒人の女性は、奥さんの親戚。
彼女は、来月ポルトガルに移住をするようです。
どんな心持ちで、渡航の日を待っていることでしょう。
「うちの奥さんは、ロンドン育ちの混血。
ぼくは日本語のできる黒人。珍しいよね・・。」
こう話してくれた友人ですが、
とても幸せな家庭を築いていていました。
奥さんの作ってくれた手料理の美味しかったこと。
「まさに、この家庭は世界に一つだけの花だね」、
と思わず祝福の言葉をかけてあげました。
日本ではタブーのように思われる肌の色。
アンゴラ人はこれを宿命と受け入れていますが、
自分の運命は、自分の力で切り開けることを
この家族から教わりました。