Saya
アンゴラの山奥で、途に迷ってしまいました。
炎天下の中、やぶの中を歩き続けました。
案内のアンゴラ人も、とうとう方角に自信がなくなり、
しだいに額や首筋から、汗が流れ落ちます。
意識ももうろうとしてきたそのとき、
「ほら、見ろよ!」と、視界の中に女性の姿が現れました。
彼女は、山間の小さな土地で、畑仕事をしていました。
サヤ(Saya)と呼ばれる、鮮やかなワンピースを着ていました。
行軍を続けていたいた私たちには、まるで看護婦に見えました。
足元には、育ち始めてキャッサバやサツマイモが植わっています。
このサヤを着て、いつも農作業をするそうです。
「下っていくと、泉があるので、そこを通ってそのまま真っ直ぐ
行きなさい」と教えられました。
お礼を言うと、休む間もなく、そのまま歩き続けました。
ふと、うしろを振り向くと、そこにはもう彼女の姿は見えません。
その代わり、やぶの中にそれまで気がつかなかった花を見つけました。
その花は、まるで彼女の分身のように、奥に向かって続いていました。