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Boas Festas
- republicofangolajp
- 2018年12月14日
- 読了時間: 2分

ここは地方の悪路。
車が通るたびに、土ぼこりが舞います。
照りつける日差しで地面は熱く、
気温は35度あります。
そこに幼い姉妹が立っていました。
妹は通り過ぎる車に近づいて、
”BOAS FESTAS”、とポルトガル語で書かれた箱を見せます。
英語で、”Happy Holidays"、「メリークリスマス」です。
この時期になると、子供たちはこうやってお金を集めて、
家計のたしやおこづかいにします。
この姉妹も、貧しい境遇の子供に違いありません。
彼女たちは裸足で立ったまま、停車する車をじっと待ちます。
ただ、車は無情にも、速度を落とすことなく
走り去っていきます。
ぼくも、前の車についていくように、通り過ぎようとしました。
ルームミラーに見える姉妹の姿が、小さくなっていきました。
その瞬間、思わずブレーキを踏んで、引き返すことにしました。
幼い妹が大きな箱を抱えて走り寄って来ました。
ぼくは窓を開けて、財布にあった100クアンザ(35円)を、
箱にいれました。小銭がストンと落ちる音が聞こえます。
箱の中は空でした。
箱には大きく書かれた”BOAS FESTAS”の文字に、
かわいいハートが、小さく描かれていました。
クリスマスになると、
雪国の子供が手にするのは、沢山のプレゼントの入った箱ですが、
この姉妹が持っているのは、お金をもらうための大きな箱です。
どんなに待っても、その箱が一杯になることはないことを知りながら
サンタクロースのような運転手を信じて待つ彼女たちの姿は、
切なく、可愛そうでした。
ぼくは、土ぼこりがたたないように、
ゆっくりと車を走らせ、その場を立ち去りました。
ルームミラーに映った姉妹の姿は、だんだんと遠くに消えていきました。

