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Boas Festas

ここは地方の悪路。

車が通るたびに、土ぼこりが舞います。

照りつける日差しで地面は熱く、

気温は35度あります。

そこに幼い姉妹が立っていました。

妹は通り過ぎる車に近づいて、

”BOAS FESTAS”、とポルトガル語で書かれた箱を見せます。

英語で、”Happy Holidays"、「メリークリスマス」です。

この時期になると、子供たちはこうやってお金を集めて、

家計のたしやおこづかいにします。

この姉妹も、貧しい境遇の子供に違いありません。

彼女たちは裸足で立ったまま、停車する車をじっと待ちます。

ただ、車は無情にも、速度を落とすことなく

走り去っていきます。

ぼくも、前の車についていくように、通り過ぎようとしました。

ルームミラーに見える姉妹の姿が、小さくなっていきました。

その瞬間、思わずブレーキを踏んで、引き返すことにしました。

幼い妹が大きな箱を抱えて走り寄って来ました。

ぼくは窓を開けて、財布にあった100クアンザ(35円)を、

箱にいれました。小銭がストンと落ちる音が聞こえます。

箱の中は空でした。

箱には大きく書かれた”BOAS FESTAS”の文字に、

かわいいハートが、小さく描かれていました。

クリスマスになると、

雪国の子供が手にするのは、沢山のプレゼントの入った箱ですが、

この姉妹が持っているのは、お金をもらうための大きな箱です。

どんなに待っても、その箱が一杯になることはないことを知りながら

サンタクロースのような運転手を信じて待つ彼女たちの姿は、

切なく、可愛そうでした。

ぼくは、土ぼこりがたたないように、

ゆっくりと車を走らせ、その場を立ち去りました。

ルームミラーに映った姉妹の姿は、だんだんと遠くに消えていきました。


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