Pensador
ペンサドール(Pensador) 、
日本語で”考える人”(Thinker)。
アンゴラを代表する工芸品です。
世界的に有名なフランスのロダン作の”考える人”は
鋳造品ですが、アンゴラの”考える人”は木彫りです。
この”ペンサドール(考える人)”
アンゴラの紙幣の透かしにも使われているほど、
この国の象徴、と言っても過言でありません。
この木彫りは、もともと北部に住む”Chowkwe"(チュオケ族)
が最初に彫ったとされていますが、作者は不明です。
地面に座り、頭を抱える、ユニークなポーズをとっています。
男性、女性かは定かではありません。
今では様々な大きさのものが彫られ、売られています。
最近、家に置いているペンサドールをじっと眺めてみました。
すると、いろいろな発見がありました。
真正面から見ると、髪を伸ばした普通の女性に見えることに気がつきました。
穏やかな表情で、口元には笑みがこぼれているようです。
しかし、真横から見ると、別人のように、考え込む姿に変身します。
真横のポーズにも、特長があることに気がつきました。
中心から後の背中、頭、首筋はすべて曲線で彫られていますが、
中心から前は、逆に直線的に、角ばった、彫りとなっています。
首から下の胴体の部分は、独特の安定感が生まれる
”黄金比(1:1.6)に近い比率で作られていることにも気がつきました。
その分、弓のようにしなった背中の延長線上に頭が、大きく突出して見えます。
これを彫ったチュオケ族は何を伝えたかったのかはよくわかりませんが、
人の外見に、曲線と直線の組み合わせがあるように、
人の心は、柔らかさや頑なものに支配されていることを、
言いたかったのかもしれません。
そのために、人は考えるだのと。
見事な作品だと、今更ながら気がつきました。
家にある高さ15センチ程度の木製のペンサドールを眺めて一週間、
まるで魔法にかかったように、
いつの間にか、自分も”考える人”になっていました。